ガラガラガラッ・・・!!!
大気を引き裂くような、雷の音と光。
城の窓ガラスがビリビリと震える。
「!!」
金の瞳が大きく見開かれた。
衝撃に、過去にまどろんでいたカウントテンは強制的に現実に引き戻される。
「今のは・・・」
椅子から立ち上がり、窓の近くへと駆け寄った瞬間。
ドガラアァァァッ!!
ひときわ大きな閃光と音量が、天を引き裂いた。
「・・・っ」
思わず眉間にしわを寄せて目を窓から背けたカウントテン。
その時、扉の外から人の気配が。
ドタドタドタ・・・バンッ!!
「伯爵様、大丈夫でございますか!?」
勢い良く扉を開けて、セバスチャンが部屋に入って来た。
「ん・・・ああ、私はなんの問題も無いが」
「それは良うございました・・・」
セバスチャンはホッと胸を撫で下ろした。
「だが、かなり近いところに落ちたようだぞ。城の周りの森に引火していないといいがな」
安堵する執事にカウントテンは窓の外を見ながら言った。
「そ、それは確かに・・・気付きませなんだ」
あわててセバスチャンも窓の外を見る。
しばらく眼下の森を注意深く観察していた二人だったが・・・。
「森は・・・無事なようですな。
たとえ火が点いていたとしてもこの雨です。大丈夫でしょう」
セバスチャンがやや諦め気味にそう言った時。
「・・・・ん?」
森の木々の隙間に、光るものが。
「何だ・・・?」
カウントテンは目を凝らしてそれが何であるかを見極めようとした。
「・・・!?」
それは・・・人間だった。
力なく地面に倒れて。
流れる、金髪。
雨に打たれている、その身体。
カウントテンの脳裏に、”あの日”のことが、一瞬のうちにフラッシュバックした。
「まさか」
短く言って、もう一度よく窓の外を見る。
「そんなはずは」
だが確かに、”そこにいるそれ”は・・・・。
「―――――――っ!!!」
考えるよりも先に、カウントテンは飛び出していた。
「お止めください、危険です!!!この雷の中・・・」
背中越しにセバスチャンの声が聞こえたが、今の自分にはどうでもよかった。
(ウソだ) (早く)
(ウソだ) (早く)
(ウソだ!!!!!) (早く!!!!)
血を吐くような思いで、引き絞られた矢じりのような速さでカウントテンは駆けて行く。
(彼女は・・・死んだんだ)
見事な銀髪も、立派な燕尾服も、一瞬にしてずぶ濡れになったが、関係無い。
そしてついに。
深い森の中に、倒れているその人物を見つけた。
うつぶせに倒れているせいで、その表情はわからない。
”あの日”の映像が、カウントテンの頭の中を再び乱す。
「・・・くそっ」
歯噛みしながら駆け寄って、思わず抱きかかえる。
金色の髪に隠れていた顔が、カウントテンの目に晒された。
「な・・・!!!!」
瓜二つ、だった。
抜けるように白い肌。雨に濡れ蜂蜜色に染まった髪。
「そんな・・・」
似すぎている、あの娘に!!
「・・・・」
しばらくその場から動けなくなってしまったカウントテンだったが、耳をつんざく雷電の光と音に、すぐに我に返った。
ここにいては危険だ、そう判断したカウントテンは嵐の中を急いで城へと駆け戻った。
無論、その人物を腕に抱いたまま。
「・・・・・嘘だ・・・・・」
呟いたその声は、新たな雷鳴にかき消されていった・・・。
{つづく}