それから、どのくらいたったのだろう。
踊り続けて、躍り続けて、いつしか雨も止んでいた。
鉛色の空はやがて、キャンパスを塗り替えたように透明な青が広がった。
二人は雨上がりの草原に寝転がり、同じ景色を見ていた。
同じ思いを胸に抱きながら。
「・・・城に、帰ろうか」
暖かい沈黙を破ったのは、カウントテンの方だった。
「そうだね、伯爵様、髪の毛とか服が水吸って重そうだし」
「確かに重いが・・・ってそうじゃなくてだな」
「?」
一瞬照れたように目をそらしたカウントテンを、不思議そうな顔で見つめる少女。
誇り高い魔族の名門の生まれであるはずの彼が、そんなにも感情を表すことは滅多に、無い。
「・・・・でいい」
「えっ?」
「カウントテン・・・テンでいい」
目を合わせないまま、それとは気付かないほど、うっすらと褐色の肌が染まっていた。
それに気付いた少女が突然、起き上がってカウントテンの正面に回る。
「顔、赤いよ」
「!!!」
「ね、テ・ン・さ・ま」
そのまま、少女とカウントテンの距離が、無くなった。
雨の香りの残る、抜けるような青い空の下で。
・・・・・そのはず、だったのに。
誰よりも、愛していたのに。
愛していたのに。
愛していたのに。
愛して・・・
最期に少女を見たのは、踊りつづけた記憶の夢の中の続き。
”その日”もまた、やはり、刺すような、雨。
倒れ崩れたあの娘を、私は助けることが出来なかった。
息を停めてもなお、雨に打たれ続けた彼女の身体。
地に流れる美しい金の髪も、その色を、緋に染めて。
その命が、一瞬にしてもう”ここにいない”と悟れるほどに、紅く、あかく。
私は・・・守ってやれなかった。
護れなかった。
私は。
誰よりも、
誰よりも愛していたのに。
{つづく}