Sinful Sheep 第4話

<記憶の夢の記憶>




それから、どのくらいたったのだろう。



踊り続けて、躍り続けて、いつしか雨も止んでいた。



鉛色の空はやがて、キャンパスを塗り替えたように透明な青が広がった。

二人は雨上がりの草原に寝転がり、同じ景色を見ていた。

同じ思いを胸に抱きながら。



「・・・城に、帰ろうか」

暖かい沈黙を破ったのは、カウントテンの方だった。

「そうだね、伯爵様、髪の毛とか服が水吸って重そうだし」

「確かに重いが・・・ってそうじゃなくてだな」

「?」

一瞬照れたように目をそらしたカウントテンを、不思議そうな顔で見つめる少女。

誇り高い魔族の名門の生まれであるはずの彼が、そんなにも感情を表すことは滅多に、無い。

「・・・・でいい」

「えっ?」

「カウントテン・・・テンでいい」

目を合わせないまま、それとは気付かないほど、うっすらと褐色の肌が染まっていた。

それに気付いた少女が突然、起き上がってカウントテンの正面に回る。

「顔、赤いよ」

「!!!」

「ね、テ・ン・さ・ま」



そのまま、少女とカウントテンの距離が、無くなった。



雨の香りの残る、抜けるような青い空の下で。







・・・・・そのはず、だったのに。



誰よりも、愛していたのに。

愛していたのに。

愛していたのに。

愛して・・・






最期に少女を見たのは、踊りつづけた記憶の夢の中の続き。

”その日”もまた、やはり、刺すような、雨。

倒れ崩れたあの娘を、私は助けることが出来なかった。

息を停めてもなお、雨に打たれ続けた彼女の身体。
地に流れる美しい金の髪も、その色を、緋に染めて。
その命が、一瞬にしてもう”ここにいない”と悟れるほどに、紅く、あかく。




私は・・・守ってやれなかった。



護れなかった。



私は。





誰よりも、


誰よりも愛していたのに。





{つづく}

第3話へ

第5話へ

小説の小部屋へ